軸封装置とは、軸(主に主軸)がケーシングを貫く箇所(軸貫通部もしくはグランド部)に設けられ ます運動⽤シール装置のことです。
ケーシングの軸貫通箇所は、軸を通すために⽳が設けられているため、この⽳(軸とケースの隙間) からケーシング内部のガスや液が外部へ漏れ出したり、外部の空気をケーシング内に吸い込む可能性 があります。そのため、搬送ガス・液の漏れ出し防⽌を⽬的として、軸封装置が使⽤されます。
軸封装置は⼤きく2種類に分類されており、メンテナンスフリーなもの、消耗品の定期メンテナンス が必要なものに分類されます。その種類について代表的なものについて説明します。
図-9 軸封装置の分類
1.裏⽻根効果⽅式
𝑃 :電⼒ W 𝑉 :電圧 V 𝐼 :運転電流値 A cos 𝜃 :⼒率 − 𝜂 :電動機効率 − セイコー化⼯機製(以下、弊社)送⾵機の⽻根⾞は⼀部製品を除 き、⽻根⾞主板の裏側に裏⽻根が存在しています。
裏⽻根の無い送⾵機の機内側グランド部の圧⼒は、送⾵機静圧相 当となるため、ガスは機外へ積極的に漏れ出します。(吐出し全閉の 場合) ⽻根⾞と共に裏⽻根も同期回転することによって、⽻根⾞とケー シングの隙間(グランド側)、特にグランドの圧⼒を低下させるはた らきがあります。これを「裏⽻根効果」と⾔います。
この効果により、これから紹介します軸封装置では、全静圧のう ち各々の割合の静圧が吸込側に作⽤していれば漏洩しない構造と なっています。 例)⾃由グランド:65% シール板グランド:35%
図-10 裏⽻根効果
2.⾃由グランド⽅式
⾃由グランドは軸封装置を持たない最もシンプルな構造となっています。⽻根⾞の裏⽻根効果を利 ⽤することで、全静圧の65%が吸込側へ作⽤している状態では漏洩はしません。但し、送⾵機停⽌中 には軸封効果はありません。
図-11 ⾃由グランド⽅式
3.シール板、ラビリンスシール⽅式
自由グランドに続きシンプルな構造となっています。この軸封シールについても⽻根⾞の裏⽻根効 果を利⽤することで、全静圧の35%が吸込側に作⽤している場合は漏洩はしません。但し、送⾵機停 ⽌中には軸封効果はありません。
シール板とスリーブとの隙間を最⼩限にすることで、圧⼒差による隙間漏れ流量を低減しています。 ラビリンスシールは、シール板を重ねることで、シール板の効果を⾼めたシール構造となっています。
図-12 シール板⽅式
図-13 ラビリンスシール⽅式
4.バイパスグランド⽅式
バイパス配管はやや複雑ではありますが、グランド⾃体はシンプルな構造となっています。送⾵機 吸込側が⼤気圧に⽐べて負圧になる状態を利⽤しています。グランドからの漏洩ガスを回収するシー ル装置となっています。但し、送⾵機停⽌中には軸封効果はありません。また、送⾵機の吸込・吐出し 共に⼤気圧より⾼い圧⼒状態では漏洩を防ぐことができません。ラビリンスシール⽅式との組み合わ せ構造もありますが、主軸の延⻑などの改造が必要になる可能性があります。
図-14 バイパスグランド⽅式
5.パッキンシール⽅式
グランド構造としてはやや複雑となります。紐状のカーボン繊維パッキン(グランドパッキン)を耐 ⾷⾦属スリーブに巻き付け、パッキン押さえで抑え込むことで、グランド部と主軸の軸スリーブ隙間を 限りなく無くし漏洩を防ぐ構造となっています。
グランドパッキンと軸スリーブは密着しているため、摩擦による摺動熱によって⾼温となるため、 外部注⽔を⾏うことで摩擦の緩和と冷却を⾏います。
グランドパッキンは締め込み過ぎると摺動摩擦が⼤きくなり、摩擦熱による破損もあることから、 締め込みには調整が必要となります。
図-15 パッキンシール⽅式
6.⽔封グランド⽅式
特殊グランドとしてはやや複雑な構造となっています。グランド内部の回転⼦と呼ばれる部品には 円盤があり、⽻根⾞共に同期回転することで、外部注⽔された⽔を円周⽅向に⾶ばすことで、⽔膜を張 り漏洩を防ぐ構造となっています。運転時のオーバーフローの⽔量観察により、外部注⽔量を調整する 必要があります。本シール構造は、⾮接触シールのためメンテンナスフリーとなっています。
⼊⽔ユニオンから注⽔された⽔は回転する回転⼦の円盤⾯上で摩擦⼒によって径⽅向に遠⼼⼒が得 られます。径⽅向に集中した⽔は⽔膜を形成し、機内圧とバランスを保ちます。回転⼦円盤径の決定 は、実験により導き出された周速値により決められています。従って、⽔膜によるシール効果は、回転 数と円盤径に依存しています。但し、送⾵機停⽌中には軸封効果はありません。
図-16 ⽔封グランド⽅式